ドイツ・ミュンヘンを拠点に活動する現代美術家、瀬戸依子(Yoriko Seto)の個展を開催いたします。
本展のテーマは「かさねる」。
瀬戸は、和紙のような繊細な「紙」という素材を使い、日常的な衣服であるセーラー服を実物大で構築します。
天井から吊るされたその作品は、紙のしわや重なりが独特の陰影を生み出し、かつてそこに存在した誰かの体温や、過ぎ去った時間の層(レイヤー)を可視化しているかのようです。素材をかさね、記憶をかさねる。
ドイツ・ブレーメンでも発表され、静かな衝撃を与えたこのインスタレーションは、物質としての軽やかさと、記憶が持つ重みの境界を問いかけます。
また、会場ではリノカット版画に加え、AR(拡張現実)技術を用いた試みも展示。アナログな手仕事とデジタルな視覚体験が重なり合うことで、静止した作品に新たな物語の時間が流れます。
福岡出身の作家が、異国の地で培った感性とともに紡ぎ出す「重なりの風景」。春のひととき、空間に浮かぶ記憶の断片にぜひ触れてみてください。