■今展に向けて
ものがそこに在ること、無いということを、私自身はどう捉え認識することができるだろうか。
目の前のものはここに在ると信じているけれど、その輪郭は次第にほどけ、此方側と彼方側を繋ぐ「あわい」のグラデーションとして存在しているのかもしれない。
すべての事象はうつろい、今は等しく更新され続ける。
世界は揺らぎ、繰り返し、絶え間なく燃え続けている。
まだことばになる前の気配のようなものをまといここに在るものは、遥か彼方のそれとどう関係しているのか。ここからは見えないものを手繰り寄せながら、想起しながら、目の前のうつろうものたちを身体に記憶する。今展では、これまで取り組んできた細密画に加えて、近年新たに制作しているアクリル画や油絵を中心に発表する。
2026.6月 松下 愛
※技法について
■細密画
透明水彩を用いて、2、3mmほどの線をさまざまな方向に重ねて描き進める。赤、青、黄の三原色を画面上で混色していくなかで、それぞれの色が混ざりあい、少しずつ滲みでるように彩色した部分が浮き上がってくる。
■油彩画
板に綿布。白亜と下地剤を調合したものを塗り、サンドペーパーで磨くという工程を繰り返し下地を制作。溶き油で薄く溶いた油絵具を何層にも塗り重ねていくグレージングという技法を使って、空間を作りあげていく。